オフサイト原油配管の減肉検査

ファルコンLine-Catによるオフサイト原油配管の減肉検査

1.緒言

ファルコンLine-Cat(ラインキャット)は配管に発生した減肉を検出する連続面診断装置で、低周波電磁誘導法(LFET)という技術に基づいています。大きな特長として、①配管全長の減肉傾向をすばやく把握できる、②漏洩の危険性が高い局部減肉や残肉値の小さい減肉の検出に優れている、ということがあげられます。オフサイト原油配管は腐食性物質の影響で内面から局部腐食が発生して漏洩に繋がります。それらの減肉を検出することは重要でありますが、配管が長距離ともなれば困難です。しかし、ファルコンLine-Catはその検査を満足させる能力を有しています。また、非接触探傷なので塗装やコーティング、錆や汚れが付着していても探傷できる等、数多くの特長を兼ね備えております。ファルコンLine-Catは約7年前に日本に導入、5年前から原油配管の実機探傷が始まり、毎年検査距離が増え、昨年度(2014年度)は配管距離で約18kmを探傷しました。今年度も順調に受注している状況です。検査技術も向上していて、ユーザーから高い評価を得ています。

2.原理

低周波電磁誘導法(LFET)とは磁化コイルから低周波の交流磁束を鋼板に与えます。減肉があった場合、その交流磁束の流れが変化し、それを検出コイルでピックアップするものです。低い周波数を使用することで検査対象物全体の磁場がより深く浸透し、表面だけでなく裏面の減肉を検出をすることが可能となります。

3.検査仕様

対象配管径1B~(スパイラル溶接配管も可)
対象配管材質カーボンスチール
適用板厚~12mm
探傷幅400mm(スキャナー幅)
作業量約80m/日
位置検出精度±5mm
検出限界減肉率20%以上 Φ3貫通孔
センサー32チャンネル(400mm幅)

4.特長

①全体の減肉傾向が把握できる。

原油配管全長の減肉傾向をすばやく把握することができる(高速スクリーニング)。

②局部減肉、残肉値の小さい減肉の検出能力が高い。

局部減肉、残肉値の小さい減肉は磁束の変化が顕著であるので明瞭に検出できる。漏洩を未然に防止することが可能。

③内外面の減肉を同時に検出することが可能。

配管の内面に発生する減肉と外面減肉を同時に検出することが可能。

④ブラインドスポットがない(連続面探傷)

磁場が全体に広がることによりセンサー間(400mm/32ch)にブラインドスポットがない。

⑤表面状態の影響が少ない。

錆等の表面付着物に対しても、スキャナー走査に影響がなければ探傷可能。錆コブ・FRP被覆・防食テープ上、高温配管、スパイラル配管も探傷可能。接触媒体は不要。

⑥クリアランスの狭い箇所の探傷が可能。

スキャナが薄いので、クリアランス80mmの狭い箇所でも探傷可能。

⑦介在物の影響を受けない。

介在物が存在していても磁束の流れに変化がでないので信号としてあらわれない。介在物を減肉と誤判断することはない。

⑧溶接線近傍の探傷が可能

減肉とノイズをリアルタイムで判別できるので冶具跡等のノイズ信号の多い溶接線近傍も探傷が可能。

⑨内容物の影響を受けない。

介在物が存在していても磁束の流れに変化がでないので信号としてあらわれない。介在物を減肉と誤判断することはない。

⑩軸方向と周方向のスキャナを使い分ける

減肉形状や配管設置状況により、軸方向スキャナーと周方向スキャナを使い分けることができる。

軸方向スキャナ
周方向スキャナ

5.キャリブレーション(裏面減肉)

裏面減肉を対象としたキャリブレーションを紹介します。試験片は、t=6mm、減肉サイズがφ10,φ20,φ30,φ40、減肉率が30%,50%,70%,100%の減肉が機械加工されています。検出された信号値は、減肉サイズおよび減肉率と相関関係が成り立っています。減肉サイズが大きくなるほど、また減肉率が高くなるほど、つまり磁束の流れを遮る減肉になるほど信号が大きくなります。これが低周波電磁誘導法の特性です。減肉率の評価は信号値と減肉幅から算出されます。

キャリブレーションデータ
試験片(t=6mm)※表面から撮影
キャリブレーションデータグラフ

6.探傷(周方向走査の紹介)

幅400mmのスキャナーを周方向走査させてデータを記録します。探傷範囲は配管下部半周の仕様となる場合が多いです。1スキャン終了後、スキャナーを次のスキャン箇所に移動させ、順次探傷していきます。スキャナーの脱着はワンタッチ操作でできるようになっていて、迅速にスキャナーの段取り替えが可能です。周方向走査ではフランジ、管台、溶接線の両側を探傷できるので未探傷範囲が少なくなる利点があります。
 ファルコンLine-Catで探傷したデータで減肉分布図(7.下記参照)が作成されます。その減肉分布図の信号部をUTで残肉測定をします。信号部の位置が正確であることと信号値および信号幅から残肉厚が推定評価できるので、UT測定を短時間で実施することができます。

探傷状況
フランジ近傍の探傷(未探傷範囲なし)
クリアランス80mm

7.減肉分布図

下記が減肉分布図(6B原油配管:公称肉厚5.0mm 下半周探傷)です。全体の減肉傾向が把握できます。減肉の数が多い場合、信号部をすべてUT測定することができないので、代表的な信号部をUT測定して、全体を評価します。ファルコンLine-Catで高速スクリーニングしてUT箇所を絞り(選択)、UTで残肉測定する(集中)、「選択」と「集中」です。